活動報告

会員寄稿・岡崎隆夫さん【2017年7月28日】

岡崎隆男さんは定年退職後千葉県から茨城県つくばみらい市に移住、時折、当会の圃場で育苗作業にご協力下さっています。筑波山水源の森づくりに関心を寄せて下さっています。

昨年は「筑波山の生き物たち(第1回、第2回)」の原稿をお寄せ下さいました。今回は第3回~第5回の原稿をいただきました。詳しい貴重な内容ですので、皆様にもお読み頂きたいと思います。

筑波山の生き物たち(第3回 両生類)

水辺の生き物・両生類の報告です。茨城県自然博物館は2006年~2008年に県西地域を調査し、2目6科11種を確認

サンショウウオ科

(ツクバ)ハコネサンショウウオ

イモリ科

イモリ

ヒキガエル科

アズマヒキガエル

アマガエル科

ニホンアマガエル

アカガエル科

ニホンアカガエル、タゴガエル、ヤマアカガエル、 トウキョウダルマガエル、ツチガエル、ウシガエル

アオガエル科

シュレーゲルアオガエル

 

 

 

 

 

 

 

 

茨城県レッドリスト(RL)5種、トウキョウダルマガエルは環境省RL準絶滅危惧、ツクバハコネサンショウウオは2013年に独立種となった筑波山系固有種で、2016年環境省から国内希少動植物に追加指定されています。

 

県カテゴリー

和 名

県カテゴリー

和 名

絶滅危惧1B類

(ツクバ)ハコネサンショウウオ

準絶滅危惧

タゴガエル

情報不足・注目種

アズマヒキガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエル

 

 

 

 

 

多くの種が減少傾向にあります。(ツクバ)ハコネサンショウウオは筑波山では減少傾向にあります。イモリはかつて広範囲に生息していたが、坂東市・桜川市しか確認できず生育場所は極めて少なくなっている。アズマヒキガエルは平地から山地まで広く生息しているが、産卵に適した沼地・池などが消滅し生育数は減少傾向にある。タゴガエルは比較的山間部の高所に生息し、筑波山周辺の山地に生息が確認できたが、ナガレタゴガエルは確認できなかった。トウキョウダルマガエルは平野部の水辺を生息域とし、かつては田んぼの普通種であったが、平野部の水田では激減し確認が難しくなっている。ツチガエルは日本各地で激減、当地でも確認することが極めて難しくなりつつあり急速に生育数が減少傾向にある。シュレーゲルアオガエルは湿地や水田周辺部を好み、山間部から平野部まで比較的広範囲に生息しているが、生息数は多くない。こうした中で、ニホンアマガエルは極めて生息数も多く、農村部から都市部まで広い範囲に分布している。ウシガエルも利根川流域・鬼怒川流域から桜川市の山間部のため池までほぼ全域に生息。増減の記載はないが、ニホンアカガエルは比較的低地の田んぼ・森・林・草地に、ヤマアカガエルは比較的山間部に生息する傾向があり桜川市の山間地で確認。(茨城県自然博物館報告書からの要約)。ウシガエルは特定外来生物で生態系被害防止・重点対策外来種、また世界と日本の侵略的外来種ワースト100に入っています。

両生類減少の要因として、

  1. 乾田化による産卵場所の消滅、用水路のコンクリート化により水面と周辺の草地や斜面林などとの遮断
  2. 耕作放棄により産卵場所や生息地が狭められている
  3. ブラックバス、ブルーギル、ウシガエル、アメリカザリガニ等の脅威
  4. カエルは皮膚で呼吸や水分補給を行うので、大気・水質・温度変化に敏感

等があげられます。

1.乾田化と用水路のコンクリート化の影響を具体的に見ていきます。

7月中旬から下旬に稲の倒伏を防ぐため、田んぼの水を一時的に抜く「中干」が行われます。田んぼで産卵する多くのカエルは中干の時期に変態を終え、ニホンアカガエルアズマヒキガエルは水辺を離れ、トウキョウダルマガエルニホンアマガエルは水路に移動。

面白い実験があります。幅30cm、深さ30cmのコンクリート製U字溝にニホンアマガエルニホンアカガエルツチガエルトウキョウダルマガエルを入れ、這い出せるかを調べたらジャンプ力のないトウキョウダルマガエルとツチガエルはほとんどが脱出できなかった。ニホンアカガエルは親なら飛び出せるが、変態したばかりの子ガエルは全く脱出不可能。何とか壁をよじ登れたのは手足に吸盤のあるニホンアマガエルのみ。ほぼ自然博物館の報告と一致します。また、ツチガエルはその年に変態し上陸するものとオタマジャクシのまま水路や田んぼの溝で越冬し翌年変態する場合があり、冬でも水が残っていないと生きていけません。ニホンアカガエルは2~3月に田んぼに残った水たまりを利用して産卵。冬場の乾田化の影響は種により異なります。

カエルは多くの虫を食べ、多くの生き物に狙われます。オタマジャクシはコイ・フナなど魚類、サギなど鳥類、イモリ、アメリカザリガニ、ゲンゴロウなどに、成体はヘビ、サシバ・モズなど鳥類、イタチ・タヌキ等々。カエルの減少は生態系ピラミッドの中で様々な影響が心配されます。

ツクバハコネサンショウウオは2013年京都大学の研究により、ハコネサンショウウオとは異種とされ、分割・独立種となりました。遺伝子解析の結果から約280」万年前にこの地のサンショウウオが孤立、独自の進化を遂げた可能性があるとのことです。体長12~16cm、筑波山の中腹から山頂部の渓流域に生息。「茨城の自然をたずねて(築地書館1994年)」には、山麓にトウキョウサンショウウオ(サンショウウオ科 体長9~10cm、環境省・絶滅危惧Ⅱ類 県・準絶滅危惧)が生息とありますが、自然博物館調査では確認されてなく、県中央部から県北の比較的低い山地や丘陵部に局所的に生息。この2種は小型ですが、自然博物館にオオサンショウウオの写真が掲示されているそうです。これは何なんでしょうか? 聞いてみたいと思います。

ここから少々脱線した話になります。ガマの油で有名な筑波山名物・四六のガマ(アズマヒキガエル)について。日本のカエルは奄美大島などに生息するオットンガエルを除き前足の指は全て4本、第1指(親指)にあたるものは痕跡的な骨があるだけ。後足の指は5本ですが、繁殖期のヒキガエルのオスにはメスを包接する際の滑り止めとして第1指の内側に瘤(婚姻瘤・番外指)ができ、これを加えると6本に見えないこともありません。

ヒキガエルの繁殖期間は約1週間と短く、メス1に対しオス3程度とオスには厳しい戦い。オスの性成熟が2年に対しメスは3年、オスは毎年繁殖に参加するのに対しメスの多くは2年に1度のためで、「蛙(かわず)合戦・ガマ合戦」と云われているのはこのヒキガエルの繁殖行動です。

ガマの油売りの口上にある脂汗は耳腺から出る粘液。これを乾燥したものを「センソ」といい医薬品で強心作用、鎮痛作用があります。この粘液は本来外敵から身を守るための毒。人間が死ぬようなものではありませんが、さわった手で目をこするとチクチクしたり、充血します。犬が齧ると泡を吹いて倒れたりしますが、ヤマカガシ(カエルを専門に捕食するヘビ)には効果がなく、ヒキガエルを食べてその毒を首の後ろの頚腺に貯め、敵におそわれたとき相手の目に吹きかけます。自然界は不思議な世界です。

ガマの油は大坂の陣に徳川方として従軍した筑波山中禅寺住職光誉上人の陣中薬が評判になったもの。これはガマガエルとは関係なく光誉上人の顔がガマに似ていたとされています。主成分は植物の蒲の花粉「蒲黄(ほおう)=医薬品に指定され利尿・止血効果」など諸説があり、後に筑波山のお土産としてセンソ入りも売られていました。

ガマの油売りは江戸時代筑波山麓新治永井の兵助が、故郷のガマの油を売りだすための口上を工夫し、浅草寺境内などで披露したのが始まりとされています。切っ先だけがよく切れるよう仕掛けがしてあり、切れない部分で腕を切ったふりをし、血糊を線状に塗って切り傷に見せています。筑波山ガマ口上保存会が結成され、口上実演や講習などの活動を続け、つくば市認定地域無形民俗文化財第1号に認定されています。

茨城県自然博物館調査報告書、茨城における絶滅のおそれのある野生生物、「水辺の生き物(全国農村教育会 2013年)」、「かえるの気持ち(晶文社出版 2000年)」を参考にしました。

<訂正とお詫び> 
要注意外来生物は2015年環境省の生態系被害防止外来種リストの公表に伴い発展的に廃止されました。
特定外来生物のアメリカナマズ・オオクチバス・ブルーギルは緊急対策外来種に。旧・要注意外来生物のタイリクバラタナゴは重点対策外来種、カラドジョウはその他の総合対策外来種に移行。さらにハス(コイ科)が国内由来の総合対策外来種に指定されています。国立環境研究所の侵入生物データベースで確認したつもりでしたが、「要注意外来生物に指定」のまま修正されていませんでした。訂正してお詫びします。  (岡崎 隆夫)

 

筑波山の生き物たち(第4回 哺乳類)

茨城県自然博物館は1995~97年筑波山の哺乳類、2007~09年コウモリを調査。また茨城県レッドデータブック(RDB)2016年版の概要に最近の動向が報告されています。

文献種

ニホンザル、ニホンモモンガ、ヤマコウモリ、アブラコウモリ

 

 

サル2匹が本年1月14日、男体山立身石付近で目撃されました。どこから来たのか定着しているのかは不明です。ニホンザルは1923年東北大学実施のアンケート調査に「筑波山中に野猿を時折見かける」とあります。サルは広葉樹に依存し、スギ・アカマツなどが多くなったことが背景と考えられます。これに加え「奈良時代以来殺生禁断がよく守られてきた筑波山で、明治維新後狩猟が盛んになってサルやワシが絶滅したともいわれています。

1955年に南面中腹以上は禁猟区に指定されています。ニホンモモンガ(ホンドモモンガ 県・絶滅危惧Ⅱ類)は頭胴長14~20cm、尾長10~14cm、体重150~220g、目が大きく前肢と後肢の間に滑空のための飛膜が発達。山地帯から亜高山帯の森林に生息する夜行性、ほぼ完全な植物食。常陸太田市で1994年捕獲、2015年目撃情報がありますが、筑波山は古い文献にあるのみ。ヤマコウモリ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)は1985以降記録がなく、しかも目視と音声による確認のみ。標本がなく県レッドリスト(RL)は絶滅ではなく削除。アブラコウモリは標高50m以下の家屋等をねぐらにする種、つくば市で確認しています。


 

確認種

ジネズミ、ヒミズ、アズマモグラ、キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、 ニホンコテングコウモリ、ニホンノウサギ、ニホンリス、ムササビ、 ホンドアカネズミ、ヒメネズミ、カヤネズミ、ハタネズミ、ホンドタヌキ、 ニホンイタチ、ニホンイノシシ

聞取り種

ホンドテン、ニホンアナグマ、ホンドギツネ

 

 

 

 

 

 

ホンコテングコウモリ(県・絶滅危惧1B類)は前腕長28~35cm、体重4~8gの食虫コウモリ。ねぐらは丸まった枯葉の中・樹皮下・樹洞・隧道・洞穴など。2007年北斜面で学術捕獲。

ニホンリス(県・準絶滅危惧)は頭胴長16~23cm、尾長13~17cm、体重250~310g、マツ林を好み樹上に樹皮などで球形の巣を作ります。樹木の種子・果実・花芽・キノコ類を好み、昆虫その他の節足動物も食べます。筑波山の生息数は多いが、全国的には平地の松林の減少により生息地が狭められています。

ムササビ(県・準絶滅危惧)は頭胴長27~49cm、尾長28~41cm、体重500~1250g、低地から亜高山帯の森林に生息し夜行性で高い所から滑空して移動。筑波山神社境内で糞やスダジイの堅果の食痕、鳴き声や巣など目撃情報があります。滑空に必要な連続した森林と巣穴としての大径木の減少により個体数は減少、牛久市の平地からは近年絶滅しています。

カヤネズミ(県・現状不明種)は頭胴長50~80mm、尾長61~83mm、体重7~14g、低地から標高1200m程度の草地・水田・畑・休耕田・沼地などに生息。イネ科・カヤツリグサ科の草地に多く、球形の巣を作ります。桜川河川敷の草地で学術捕獲、子供を背負ったものも確認されています。

ホンドテンニホンアナグマは自然博物館調査では目撃情報のみ、痕跡確認はできていませんが「筑波山の自然図鑑(メイツ出版)」に写真掲載、アナグマは県RDBに「平地から山地まで分布、県南部の平地でも見られるようになり、分布域に回復傾向がみられる」とあります。あるいは調査不足かもしれません。ホンドギツネは目撃情報1件のみで生息実態は不明です。

ニホンイノシシは霞ケ浦周辺にも定着を見せ始めるなど分布域と個体数を増加させています。体長100~170cm、肩高60~90cm、体重80~190Kg、身体能力に優れた生き物です。時速40Km以上で走れ100mを9秒切るスピード、「猪突猛進」と云われ真直ぐにしか進めないイメージがありますが間違い、急停止し方向転換できます。助走なしで垂直に1m以上飛び、時速4Kmで30Km泳ぐことも可能。また、鼻の力は強く雄で70Kg、雌でも50~60Kgの石を動かすこともでき、土を掘り起こすことも得意。雄は15cmを超える牙をアッパーカット気味に振り回し、人間にとっては太ももの位置に当たり大腿動脈を破り失血死することもある危険な動物。雑食性でドングリなどの木の実・果実・タケノコ・芋・地下茎を好み、ヘビ・カエル・ミミズなども食べます。イノシシ被害は今に始まったことではありません。「生類憐みの令」を進言したのは筑波山知足院住職の隆光。筑波山は徳川幕府と関係が深く、家康は江戸城の鬼門に当たる筑波山を徳川家の祈願所と定め社領(のちに寺領)として500石を寄進、3代家光は幕府直轄普請で筑波山諸堂を新造・再建。5代綱吉の時代には知足院の朱印地は1500石になっています。知足院は飯を炊いて犬に与えたといい、鳥獣が増え田畑が荒らされました。特にイノシシの被害が大きく、石垣で中腹の町と畑を囲んだ「イノシシよけ」が今も見られます。


 

外来種

ハツカネズミ、クマネズミ、ハクビシン、アライグマ、クリハラリス(近くに)

 

 

 

ハツカネズミクマネズミはいずれも世界の侵略的外来種ワースト100、生態系被害防止外来種です。

ハクビシン(白鼻芯 生態系被害防止外来種)は自然博物館調査では聞取り種ですが、「筑波山の自然図鑑」に写真掲載、県RDBに1990年代以降全県に分布を広げているとあります。頭胴長61~66cm、尾長40cm、体重3Kg 。原産地はヒマラヤ、中国南部、台湾等。戦時中に毛皮用に持ち込まれ日本列島ほぼ全域の市街地から山間地まで広く分布していますが、江戸時代にも記録があり浮世絵等に描かれている雷とともに現れる妖怪・雷獣はハクビシンではないかと云われています。長野県では一時珍獣として県の天然記念物に指定されたこともあります。雑食性で果実や種子を好み、昆虫類・魚類・サワガニから鳥の卵・雛や残飯も食べます。ミカン・スイカ・メロン・モモ・カキ・サクランボ・トウモロコシ・トマト等の農業被害ともに家屋に住み着くと糞尿による悪臭被害を引き起こします。

アライグマ(特定外来生物 日本の侵略的外来種ワースト100)は茨城県南・県西・県北地域で2000年代後半に同時多発的に確認、分布域と個体数を徐々に増加させています。カナダ南部からパナマ原産。頭胴長40~60cm、尾長20~40cm、体重4~10Kg、稀に20kg。1962年犬山モンキーセンターから12頭が集団脱走し野生化、手足が器用で脱走しやすい動物。またテレビアニメ「あらいぐまラスカル」のヒットにより1970年代後半からペットブームとなり、多い年では年間1500頭も輸入。幼少時は人になつきますが、成獣特に発情期は気性が荒くなり、一般人がペットとして飼育するには難しい動物。アニメ最終回で野生に戻され、同様に自然界に返された個体も少なくないと云われ、急速に拡大しました。雑食性で小型哺乳類・魚類・鳥類・両生類・爬虫類・昆虫類・野菜・果物・穀類等、中でもトウモロコシの被害が深刻です。県は防除計画を策定し根絶を目指しています。罠で捕獲する際の誘引餌にキャラメルコーン・マヨネーズ・揚げパンなどを用いることが多いようです。つくば市にもハクビシン・アライグマ駆除の専門業者がいます。

クリハラリス(タイワンリス 特定外来生物)は菅生沼東岸を中心に定着、つくば市に隣接する常総市と隣の坂東市は防除計画を策定し根絶を試みています。台湾、大陸中国南部からマレー半島・インド北東部原産。頭胴長20~26cm、尾長17~20cm、体重300~440gのニホンリスよりやや大型。1935年伊豆大島の公園から逸出、その後各地の公園で観光用に放たれ九州から関東まで分布を広げています。食性は樹木の種子・果実・花・葉等、アリ・セミ・カタツムリ・鳥の卵なども少量食べます。最大の問題は冬季に常緑樹の樹皮を剝がし、樹液を舐めスダジイ・ヤブツバキなどを枯れ死させます。「筑波山水源の森づくり」を実施している地球の緑を育てる会にとっては侵入を何としても防ぎたいものです。

 特定外来生物は明治以降に持ち込まれた海外起源の外来種の中から生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす又は恐れのあるものから指定され、飼育・栽培等、輸入、野に放つことを禁止。研究目的等で許可を受けた場合でもマイクロチップを埋め込むなど個体識別の措置を講じる義務を負います。違反すると個人で懲役3年以下又は300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金など罰則規定があります。生態系被害防止外来種に特定外来生物は全て含まれていますが、法規制のない種も含め特に侵略性が高い外来種をリスト化し、対策の方向性、利用上の留意点等の情報を示す目的で公表されています。このリストの公表により旧来の要注意外来生物は発展的に廃止されました。

茨城県自然博物館調査報告書、茨城県RDB、国立環境研究所侵入生物データベース、 つくばの自然史1筑波山(学園都市の自然と親しむ会編)を参考にしました。

 

筑波山の生き物たち(第5回 爬虫類)

茨城県自然博物館は2006~08年に県西部の爬虫類を調査しています。

トカゲ亜目

ニホンヤモリ、ヒガシニホントカゲ、ニホンカナヘビ

 

 

ニホンヤモリは茨城県が太平洋岸の北限に近い生息地。環境に応じ体色の濃淡を変えることが出来、全ての指に趾下薄板が発達し垂直なガラス面にも張り付くことが出来ます。全長14cm、人家とその周辺に生息、昆虫類・クモ類・節足動物など人家内外の害虫を捕食することから「守宮・家守」とされました。シーボルトが新種としてJaponicusを付けましたが、平安時代以降にユーラシア大陸から定着した外来種と考えられています。

ヒガシニホントカゲニホンカナヘビは県内に広く分布していますが、個体数は減少傾向にあります。ニホントカゲは15~25cm、草原や山地にある日当たりのよい斜面等に生息、特に瓦礫・石垣などを好む。ニホンカナヘビは16~27cm、平地から低山地帯の草地や林縁に多く生息。食性はほぼ同じで昆虫類・クモ類・ミミズなどを主に果実も食べます。

カナヘビとトカゲの見分け方は 

  1. カナヘビの尾長は全体の2/3、トカゲは約半分 
  2. カナヘビの鱗はカサカサし、トカゲは細かく光沢がある 
  3. トカゲは土に潜るがカナヘビは潜らない 
  4. トカゲは逃げ足が速い

カナは可愛の意味があり可愛い蛇説と金属の色(カナ色)説があり、トカゲは戸の陰にいることから戸陰、早く走って隠れるので敏駆・疾隠から名前が付きました。「蜥蜴のしっぽ切り」は外敵に襲われた際、自ら尾を切り捨てる自切(じせつ)という行動(むしろ反応)。自切した尾はしばらく動き回り、敵の注意を引き付けている間に逃げるチャンスが生まれます。切断面は筋肉が収縮し出血を押さえます。トカゲ・カナヘビ・ヤモリとも再生した尾は短く、中に骨はなく軟骨で支えられていますが、両生類のイモリは骨まで、さらに手足まで再生できます。


 

ヘビ亜目

シロマダラ(県・準絶滅危惧)、ヒバカリ(県・現状不明)、アオダイショウ、 ジムグリ、シマヘビ、ヤマカガシ、ニホンマムシ

 

 

 

シロマダラは県RDBに近年確認例が増えているとあります。夜行性で全長30~70cm、山地から平地の主に森林に生息、気性が荒くトカゲや小型ヘビ類などの爬虫類を捕食。

ヒバカリは自然博物館調査では確認されていませんが、筑波山の自然図鑑(メイツ出版)に写真記載。全長40~60cm、水田・湿地・用水路を好み泳ぐのが上手、カエル・オタマジャクシ・ドジョウ・ミミズなどを捕食。無毒ですがかつては毒蛇とみなされ、名前は「噛まれたら命はその日ばかり」に由来します。

毒蛇はヤマカガシとニホンマムシ。

ヤマカガシは60~100cm、平地や低山地の水辺・水田地帯・湿地周辺に生息、カエルを主に捕食。毒は2種類。1つは四六のガマで紹介したヒキガエルの毒を頚腺に貯めもので、危険が迫るとコブラのように頭を持ち上げゆすり、頚腺を目立たせることで威嚇します。自身も毒を持ち、毒牙は2mm以下と小さく、咬傷直後には激しい痛みや腫れはあまり起こらない。毒が血液に入ると強い血液凝固作用により止血作用を失い、並行して血栓を溶す作用が亢進、鼻粘膜・歯茎・消化器官・肺から出血、重症例では脳出血・急性腎不全などを引き起こします。

ニホンマムシはハブと比較して、毒量は少ないが毒性は強い。子供で産む卵胎生、全長45~65cmと小さく平地から山地の森林・藪に棲み、水田や小さな川周辺など水場に多く出現。小型哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類を捕食しますが、動物が出す熱(赤外線)を感知するピット器官があり、暗闇でも獲物を見つけられます。関西では鰻丼をマムシと云いますが、ヘビのマムシとは関係なく「鰻飯(まんめし)」の訛り説と飯の間に挟んで蒸す「間蒸し(まむし)」説があります。

ジムグリは全長70~100cm、平地から低山帯の森林・草原・水辺に生息、地中や石の下によく潜ることから命名。

シマヘビは全長80~150cm、主に耕地・河川敷に生息、カエル類を主にネズミ等を捕食。桜川市などで確認していますが、生息数は少ない。

アオダイショウは全長100~200cm、水田・草地・森・林のほかに住宅地にも生息。無毒で性格もおとなしく、普通種として広く分布しています。鳥・卵・小型哺乳類を捕食。卵を丸呑みした場合、これを割るために高い所から落ちると云われますが、誤って(ドジって)落ちたものです。


 

カメ目

クサガメ、ミシシッピアカミミガメ(生態系被害防止外来種、世界・日本の侵略的外来種ワースト100)。未定着外来種=カミツキガメ(特定外来生物・日本のワースト)、ワニガメ(生態系被害防止外来種)、ハナガメ(特定外来生物)

 

 

 

 

クサガメは甲長20~30cm、流れの緩やかな河川や低地の湖沼に生息、桜川市で散発的にごく少数の個体を確認しているのみ。雑食性で水草・水生昆虫・甲殻類・カエル・魚類等を食べます。捕まえると臭いにおいを出すことから名前が付きました。「銭亀」は本来ニホンイシガメの幼体ですがその数を減らしており、現在はクサガメの幼体が銭亀として売られています。クサガメは在来種とみなされてきましたが、遺伝学的な解析結果から中国・朝鮮半島から持ち込まれた外来種との説が有力です。縄文時代・弥生時代の遺跡から見つかっていません。とするとニホンイシガメは茨城県西部では確認されておらず、カメは全て外来種なの?

ミシシッピアカミミガメは米国南部からメキシコ北東部原産。甲長4cmのうちは背中が緑色で「ミドリガメ」として縁日やペットショップで売られていますが、2年目には緑色が消えオスはしばしば全身が黒色化。メスは28cm位まで育ち、飼いきれずに遺棄されるものが多い。1950年代に輸入が始まり、年間に数十万~百万匹近くが輸入され多少水質の悪い場所でも生息でき産卵数も在来種より多く、しかも他のカメの卵を食べる習性があります。飼育等を原則禁止している特定外来生物に指定されていません。環境省はその理由を(旧)要注意外来生物で次のように説明しています。「遺棄や逸出による個体が広く定着しているが、大量に飼育されており規制により代替となるカメ類の輸入が増大する可能性や、遺棄される可能性などが考えられる。販売・飼育に当たっては飼い主が責任をもって飼育することを確認する必要がある」とし取扱注意にとどめています。しかし、原産国米国は販売禁止、輸出のみを認め、オーストラリア・韓国等は輸入禁止となっています。雑食性で藻類・水生昆虫・エビ・貝類・魚類など様々なものを食べます。公園の池などで日向ぼっこを見かけますが、爬虫類は変温動物。体温を上げるためにエネルギーを使わず、哺乳類と比較して1/10の食べ物で生活できます。トカゲもよく日向ぼっこします。

他に定着はしていないものの、ペットからの逸出個体と思われる外来種が各地で発見されており、繁殖の可能性は否定できません。カメは寿命が長くいったん自然繁殖すると根絶は難しいと思われます。

カミツキガメはアメリカ大陸原産、甲長49cm。1950年代以降輸入、そこから遺棄・脱走して自然界に入り利根川水系の印旛沼で繁殖、産卵数は20~30個、稀に100個と多く、千葉県は専門職員を配置し駆除に努めています。肉食の強い雑食、水草・水生昆虫・甲殻類・魚類・小型カメ類など様々なものを食べます。本来は臆病で水中では人を襲うことはなく、陸上では身を守るため噛みつき、強力なあごの力は危険です。

ワニガメは米国南東部原産、甲長最大80cm、最大113kgの大型種。飼育下では58年10か月を記録、上野不忍池で産卵している個体が捕獲されたこともあります。河川・湖沼に生息し、肉食傾向の強い雑食性、魚類・両生類・甲殻類・水草などを食べます。

カミツキガメはマムシ・ヤマカガシと共に特定動物に指定。特定動物とは動物愛護保護法で人の生命・身体又は財産に害を加える恐れのある動物。飼養・保管は知事の許可が必要、飼育には一定の施設やマイクロチィップを埋め込むなどが定められています。原産国米国では開発による生息域の破壊・水質汚染・食用やペット目的の乱獲などにより生息数が減少。2006年にワシントン条約付属書に記載されました。

ハナガメは中国・台湾などが原産、斑紋が花に見えることから中国名「花亀」。最大甲長24cm、古くからペットとして輸入されていましたが、中国で生息数が激減、2005年ワシントン条約付属書に記載。日本国内の飼育下繁殖個体が流通していましたが、2016年特定外来生物に追加指定されました。

≪情報≫ツクバハコネサンショウウオが環境省2017RL絶滅危惧1A類に追加指定。

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