中国雲南省西双版納タイ族自治州孟海県でのどんぐりポット苗づくり指導。 「雲南省感動の出会い」
中国雲南省は、東アジア地域の植生発生の本源地の一つといわれています。ここで発生したというシイ、タブノキ、カシ類などの北限が日本。ところが、現在の日本でもこの本来木たちの被覆率は0.06パーセントといわれています。日本全土の面積よりも約二万平方キロメートル多い約39万平方キロメートルの面積を持つ雲南省。南部シーサンパンナなどの暖地海抜500メートルから、およそ6000メートル前後にせまる高山帯まであります。熱帯、亜熱帯、温帯、寒帯の気候を持つ内陸の省です。
しかし、現在の雲南の緑被覆率は38%。かつて深い緑につつまれていた山野は、現在、急速な開発伴い、上空からは赤色の地肌を各地にみせて、蛇行する赤濁の流水が、谷筋をくだっています。
今回は2011年11月28日から同12月1日までの4日間の植生調査と現地の焼畑山地の緑再生地視察でした。幸い国土交通省の助成をえて、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭博士と二人の踏査行となりました。同博士とは、昆明市の海口などにつづいて3度目の雲南省調査です。
現地へは、いくつものルートはありますが、まず、日本の成田を発って、北京経由で昆明入り、ここで一泊して翌日朝の便でシーサンパンナの景洪に着くや、現地林業局の楊所長の出迎えで緑再生の曼稿保護区へ。見渡すかぎりのバナナ畑を左右に見ながら、西へ。
海抜500メートルの景洪から、1100メートルの孟海へ向かいましたが、この間、車で快適な山間路を所用約40分。なだらかですが、流れをはるか眼下に見下ろす山地の中腹路で、大型ダンプも多い道です。
眼にする光景は、深い谷筋から尾根の山頂にかけて人力で開拓したというゴムの木で満ちています。熱帯域から、やがて海抜700メートルをこえるあたりからは左右の山地斜面は、なべて茶畑にかわります。孟海です。
山には、杉林、竹林、雑木林なども散在し、人家のある路上わきには、マンゴーやパパイヤが自生しています。
宮脇方式による曼稿地区の緑再生地は、全体で約800ム(約52800㎡)あり、そのうちの10ム(6600㎡)を特定しています。宮脇博士は現地の緑再生地に満足されました。
つづいて、ハニ族の女性たちが苦心してつくった苗圃を視察。歓迎された育苗する女性たちに、要点を説明した宮脇博士。現在、この緑再生の費用は、三井物産株式会社の環境基金の助成を願って、依頼中で、現地農民の実現への期待は大きいです。
曼稿地区で宮脇先生とドングリを拾う ハニ族の女性たち |
育苗圃 |
宮脇方式による植樹予定地 |
2日目は、孟海から、空港のある景洪へもどる中間地点にある茶で知られる南糯山を楊所長の案内で登りました。
海抜1100メートルレベル。濃い朝霧の中、蛇行する細い急坂を車でのぼり、茶栽培農家のある地区に着きました。にわかに霧がはれて、快晴な空でした。ここに車を止めて、徒歩で約40分、山を登りました。
栽培600年、700年の茶木があります。折よく栽培者がいて歓談。先祖伝来の茶園だということです。年間茶園だけて10万元以上(150万円)だそうです。「オレよりも収入が多いよ」と楊所長。 この山の茶園の上方、尾根筋にあたる稜線にそって、珍しく巨木がたちならんでいます。そのいちばん手前の巨木をさして、山をのぼりつづけている宮脇博士がポツリと一言。 「あれは、シイの木じゃないかね」 大人3人が、ようやく手をまわせると思える太さで約30メートルを越すだろうシイの木。根元には三層、五層にも重なって落ちたシイの実がビッシリです。
ふと、シイの木から眼下の開けた里山方向へ眼をうつすと、10メートルほどの路側のすぐそばに傘を開いたような木姿のタブノキがああります。
南糯山を下りて空港への途次、ハニ族の食堂で昼食。テーブルの周りの椅子にドッカリと腰をおろすなり、笑顔満面の宮脇博士の口から意図せずにもれた一言 「今日は、私は幸福そのものです」と。
これまで3度、ご本人の希望もあり、訪雲のたびに調査しつづけてきましたが、この日ほど明白にカシ、シイとタブノキを確認できたのは初めてのことでした。
「雲南こそ、シイ、タブノキ、カシ類の源点」という宮脇博士の持論が、証明される形となったといえましょう。
南糯山で見つけたシイ(左)とタブノキ(右) |
宮脇先生 |
(植樹ツアー・7初旬実施予定) (ルポ・須藤高志記/通訳・王玉山)