活動報告

中国雲南省における植物生態系調査が実施されました。【2010年12月21日~28日】

 雲南省緑色環境発展基金会からの依頼を受け、2010年12月21日~28日(8日間)、当会顧問で(財)地球環境戦略研究機関国際生態学センター長の宮脇昭先生と同センターの目黒伸一研究員が中心となり、同省の植生調査に行きました。荒廃する畑に残されていた紅椎(孟海県)

 中国チベット・青海省に源流を発し、雲南省を通ってミヤンマー、ベトナム国等を通過して南シナ海に流れ込むメコン川は、雲南省では瀾滄江と呼ばれ、この川の左右で植物生態系が大きく変わり、植物学的にも、非常に重要な価値のある地域です。日本の常緑照葉樹林は雲南省が原流点といわれ、照葉樹林文化圏として日本にも民族的影響を少なからず与えた地域でもあります。しかし、近代の中国史の流れの中で照葉樹林帯は多く破壊され、省都昆明市やその他の地域でも、殆どが人間の営みによって意図的に植えられた二次林でした。

 昆明市北方、車で二時間の尋旬県清水海は、高度2400mにある湖で周囲は退耕還林地(農地を林地に変える政策で1998年から始まった)です。現在、西蔵柏、雲南松などが植えられていますが、10年ほど前にはアラカシなどが植えられ、林を形成しています。人口600万人の昆明市の水がめとして同市中央に存在するテン池は現代の生活水の流入から汚濁が深刻な問題となっており、代わってこの清水海からの補水は不可欠で、周囲の植林が重要な意味をもちます。茶の古木を囲む裴盛基先生、宮脇先生

 同省西双版納泰族自治州は、ミヤンマーと国境を接し、少数民族が多く暮らし、熱帯性の動植物も存在する風光明媚な州です。同州孟海県曼稿保護区下賽村周辺は、高度1100m前後、高度の違いによって温帯林と熱帯林とが混じり合う地区ですが、山林伐採後の焼畑農業で修復困難な山地があり、この植林のための植生調査が今回の目的でした。多くは二次林と化していますが、特産である茶の栽培畑には、樹齢400年前後の古木も点在しています。農民の要求に即しながら、自然生態系に適った植樹の検討が重要でしょう。

  今回の調査では行かれなかった昆明市西山区海口県は昆明市林業局の管轄下にあり、日中友好の森をつくり、中国の植え方、と宮脇方式の植栽で生長レベルを比較して、その結果を確認する方向がよいと思われます。

  今回の調査には、中国科学院昆明植物研究所、中国民族植物学会主席の裴盛基先生も同行され、現地植物の見解を説明して頂くとともに、宮脇先生との親交も深められました。7月には、日本からの植樹ツアーを企画、裴盛基先生と宮脇先生を中心とする勉強会も予定しています。詳細は決定次第ご案内いたしますので、ご参加ご検討下さい。

茶畑の中のタブノキ(孟海県) 熱帯樹の板根(西双版納・象の谷) 少数民族の歌で歓迎(西双版納・象の谷)

茶畑の中のタブノキ(孟海県)

熱帯樹の板根(西双版納・象の谷)

少数民族の歌で歓迎(西双版納・象の谷)

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