コラム

NHKスペシャル「未来への分岐点」(第2回・大地は人類を養えるのか~水・食糧クライシス~)を視聴して。

 前コラムに続き、未来への分岐点第二回放送・「大地は人類を養えるか~水、食糧クライシス」を見ての感想です。分かっているつもりでも映像で理路整然と見せられると衝撃でしかありませんでした。

 世界一の飽食国日本、毎日35トンもの食糧が廃棄処分され、まだ食べられるのに廃棄される食品ロスは年間612万トンにもなります。食肉用牛の生産が盛んなアメリカのカンザス州では、牛肉1㎏を得るために6~20kgの穀物が必要とされ、穀物生産量の1/3は人間の食用ではなく餌になるのだそうです。更に、その穀物を得るために大量の水が必要で、このままのペースで行けば10年後には地下水が枯渇し、2050年には世界の7割の地域で地下水が同様の状態になるとカンザス州農業部水管理課のマイケル・メイヤーさんは言います。先進国や新興国でおきている飽くなき飽食追求の一方で、知らぬ間に環境破壊が促進され億単位の人々が飢餓に苦しむこととなっています。地球温暖化は環境問題の中でもとりわけ重要でありますが、世界資源研究所のクレイグ・ハンソン副代表によれば、食糧を得るために行われる農地開拓こそが地球温暖化の最大の原因であると言います。農地開拓のために毎年広大な森林伐採が行われているのです。地球温暖化、食糧難問題は深く関与しており切り離せる問題でないのです。食糧不足は各国の食糧争奪戦に発展、食糧輸入に依存する国の悲惨さは言うに及びません。

 課題は大きくても、私たちにできることは一歩一歩です。この中で紹介されていた取組は2019年ストックホルムで開催された「EATフォーラム2019」の「ブラネタリ―ダイエット」です。70億人を乗せた「地球号」の一人ひとりがダイエットするのです。皆が飽食を止め、見本として示された「一皿」を食べることを心がけるというものです。その「一皿」とは、お皿の半分は野菜、残り半分には、豆、穀類、肉なども入りますが、肉は大豆が原料の人工肉です。本物の牛肉、豚肉などは週に98g、鶏肉203gと少ないです。こうすることで、食糧の世界的偏りを無くし、肉類を育てるための水や餌は大幅に削減され、食品ロスも少なくなります。このような食糧システムの改良が必要だと訴えます。この「一皿」を良く視ると所謂、昔からの日本食に似ています。「ま・ご・わ・や・さ・し・い」という合言葉は日本の主婦ならだれでも知っていることですが、「ま」→豆類、「ご」→胡麻、「わ」→ワカメなおどの海藻類、「や」→野菜、「さ」→魚、「し」→シイタケなどのキノコ類、「い」→イモ類、この7項目を献立に使用することを心がけることが健康維持につながるという語呂合わせです。

ユネスコは2013年、日本の「和食」の食文化を無形文化遺産に登録しました。本当に日本人として誇るべきことです。ファーストフード等の多量摂取や、加減を無視しての飽食で生活習慣病に罹り、肉体的苦痛と医療費の増大等の負のスパイラルに陥るより、昔ながらの日本食を手作りすることで、食糧難や国の医療費のカットにも貢献できるのです。立派なSDGs活動です。今回の放送では、何も手立てを講じなければ日本でも将来、食物争奪戦や飢餓に苦しむ人が出てくる危険性を警告しています。こんなに素晴らしい文化がそのような事で破壊されるのは酷いことです。それをくい止めるのに残された時間は10年、危機意識をもって暮らしていきたいですね。

                                                                    石村章子

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