コラム

NHKスペシャル「未来への分岐点」(第1回・暴走する地球温暖化“脱炭素”への挑戦)を視聴して。

 

 三回に渡って放映されたNHKスペシャル「未来への分岐点」、ご覧になった方も多くいらっしゃることと思います。毎回衝撃の連続でした。2050年の脱炭素0を目指すには、2021年から2030年までの10年を私たち人類がどう生きるかで、その後の地球環境が救われるか悪化の一途を辿るかが決まるというのです。待ったなしの10年!

 第一回は暴走する地球温暖化。大きな大きなビクともしない「母」なる大地だと思っていた地球は、私たち「子供」の「母」の存在すら気にしないわがままいっぱいの行動で、くたびれ果て、大病に陥る一歩手前の状態であることに気付かされる内容です。2020年一年だけで、世界の森林は日本の1.7倍の面積を焼失、シベリアの永久凍土は溶け始め、そこに眠っていたウィルスが出現すれば、新たな感染症の流行がおこる可能性も指摘されています。ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストーム博士によれば、「地球は既に飽和状態、惑星の限界」に来ているとか!今の温度より「+1.5度」上昇したときが地球の限界。このままで行けば2100年には「+4度」になるとも言われています。どんな地球になってしまうのでしょうか?脱炭素化に向けて世界レベルで技術革新が起こり、風力、太陽光発電などの自然エネルギーへの転換、電気や水素自動車への導入など、「炭酸ガスを発生させない」努力が始まっていることは周知の事実です。一方で「炭酸ガスを吸収する」努力はどうでしょうか?

 脱炭素化に向けて人類ができることは、炭酸ガス(温室効果ガス)を発生させないこと、もしくは同ガスを吸収することの二つしか方法はありません。炭酸ガスを吸収するには植物の力に頼るしかありません。1997年の京都市で行われた地球温暖化防止京都会議・COP3で、温室効果ガス排出量の取引が採択され、2005年から発効されています。同ガス排出枠が余った国や企業が、排出枠を超えた国や企業と取引をして同ガスの削減を果たすというものです。これらは国や企業といった行政レベルでの活動であり、一般市民の我々には馴染みの薄いものかもしれません。一方で私たちの会は、まさにこの炭酸ガスを吸収する植樹活動を行っています。国、企業といった大きな枠組みを設定しなくとも、個人といった市民レベルからでもできる炭酸ガスを吸収する活動は、時代のニーズにもおされ、賛同されているのも事実です。では私達の活動の全てが受け入れられているかというと、実際はなかなか難しい面もあります。前回のコラムでも書きましたが、木を植えると日陰になる、剪定などの管理にコストがかかる、落ち葉掃除が大変などという関係者の現実的思いからの植樹反対意見もあり、光合成で炭酸ガスを吸収するという教科書的知識はあっても、自分たちの「ラクな方」の思いが勝ってしまうケースに多々遭遇します。

 農業の盛んな茨城県では、いわゆる農家の屋敷林を多く見かけます。農家の周りを樹木で囲み、北側西側は常緑樹を植えて、寒さや暴風を防ぎ、東側南側には落葉樹を植えて、冬の暖かい日差しを取込む仕組みの生垣です。本当に素晴らしい先人の知恵だと思いますし、地球温暖化防止にも勿論効果的です。また、新しく住宅を建てる場合、敷地の一部に樹木を植えることを義務づけて販売する住宅地もあります。自分の庭に少しでも樹林部を作る工夫をするなど、個人でもできる地球温暖化防止策です。その効果は、樹木が無くなれば砂漠化する事実に比べ、すぐに目測できるものではありません。植樹すると、どれだけの炭酸ガスが吸収されるのかを数値化し、みんながすぐ理解できる方法を確立することが大事でしょう。勿論、これまで大学や研究所等で数値化は行われておりますので、これらを一般の方々に解かり易い方法で広報することが私達団体の役目かもしれません。何事につけ下落のスピードは速いですが、積み上げていくのは時間がかかるのが世の常です。将来を生きる可愛い孫子のためにも、市民レベルでの緑環境再生・造成活動を少しずつでも積み上げる努力を惜しまずしたいものです。この放送の最後に登場するアインシュタインの言葉・「the world will not be destroyed by those who do evil, but by those who watch them without doing anything」「人間社会(もしくは地球)は、悪事を働く人達で滅びてしまうほど脆いものではない。しかし、その悪事を働く人々を周囲の人々が黙って見過ごしてしまうようでは滅びても不思議ではない」は、考えさせられる言葉ですね。

                                                                     石村章子

 

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